当院は許可病床19床の有床診療所になります。無床診療所との違いは病床の有無のみですが、病院とは法律上大きな差異があります。許可病床数が多くなればなるほど、施設基準は厳しくなり、社会的な使命や責任も大きくなる分、より精密な検査機器も導入しやすくなりますが、病院だからこそ対応できない部分、というのも出てきてしまいます。
 典型的な例が「脊椎圧迫骨折」をはじめとした「急な腰痛」に対する対応です。大きな病院では大病を取り扱うのが使命であり、固定、安静、リハビリテーションが中心となる「急な腰痛」は、たとえそれが「脊椎圧迫骨折」でも入院の提案すらしてもらえないケースは珍しくありません。

 病院の中では回復期リハビリテーション病床や地域包括ケア病床はこうした患者の受け皿となるはずですが、そうした病院は逆に急性期医療の体制が不十分なケースが多く、また主に急性期病院からの転院の受け皿としての機能が中心であり整形外科以外の方も数多く入院され、入院期間も長期になる方がほとんどのため、急な入院の対応が難しい事もあり、受け入れ先が見つからず高度な医療を必要とするわけでもないにも関わらず、富士宮市外、時にかなり遠方の病院へと搬送される方が決して少なくありませんでした。近隣市の病院からも、そうした富士宮市からの救急搬送依頼に対する多くの不満の声が現場で聞かれました。

 ここ10数年、当院は有床診療所でありつつも人的資源の問題などで休床を余儀なくされてまいりましたが、このような富士宮市整形外科医療の現状を鑑みて、改めて有床診療所としての責務を果たすべく、入院の再開に踏み切り、医療法人化をするところから始め約3年の準備期間を経て、新たなスタートを切ることになりました。新たな病床を取得することはなかなかに難しく、当面はこの19床で富士宮市の整形外科医療の一端を担っていければと考えています。

当院の理念は、主に以下の三つになります。

標準的であること
 富士宮市ではこれまで、標準的な医療を受ける機会すら得られないケースが散見されました。だからこそ、遠方の病院まで搬送されてしまっていたわけです。当院では、標準的で受けられて然るべき医療を提供し、また職員にも医療者として受けられて然るべき待遇を用意します。

己の意思で決定すること
 医療は受けられる方が自分の意思で受けることを決めるべきである、との考えを強く持っています。丁寧な説明を繰り返す中で、最終的に最も良い選択肢を選んでいただけるよう努力します。職員にも、当院のことを十分理解していただいた上で当院で仕事を続けることを選んでいただきたいと思っています。

充足感があること
 当院で医療を受けられた方に、充足感のある生活を送っていただくのが最大の目標です。身体を治すことより、どうすれば最も満足のいく生活が送れるか、を常に考えて診察に当たっています。もちろん当院の職員には仕事も私生活も充実したものとして欲しいと常日頃から願ってやみません。

 それぞれが、当院へ受診される方も、当院で働くスタッフも、そして私自身もそうあるべきである、それが現代の日本医療に必要なものである、と信じています。以上、長くなりましたが、これらの理念を掲げ、富士宮市の活性化の一助になるべく、末永く励んでいく所存ですので、今後宜しくお願い申し上げます。

PAGE TOP